INTERVIEW 代表インタビュー
創立55周年。それは、
新たな飛躍に向けた始動の時。

アルメックスの創立55周年にあたり、代表取締役社長・馬淵将平が、長い歴史の中で培ってきた有形・無形の財産と、それらに支えられている「今」を見つめ、さらに次の50年、100年へ向けた抱負と決意を語ります。

株式会社 アルメックス
代表取締役社長
馬淵 将平
Shohei Mabuchi
1972年11月生まれ。神奈川県横浜市出身。
早稲田大学卒。1995年に日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行し、2007年にゴールドマン・サックス証券に入社。2009年にUSEN 常務執行役員 CFOに就任し、2011年には同社取締役副社長に昇格した。2013年11月アルメックス代表取締役社長就任。株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 常務取締役 CFOを兼任。

アナログな現場で育んできた信頼と、
デジタルな思考と技術を融合し、より強靭で柔軟な組織体へ。
ADXへの挑戦の始まり。

―― 社長は金融業界の出身ですが、社長就任当初、アルメックスをどのような会社だと感じましたか?
金融の世界は、経営者やその会社の人材、事業性をしっかりと見極める力が求められると同時に、データやロジック、合理性といった客観的な視点で企業の製品・サービス、業績や信用力を評価することの多い、どちらかといえばデジタル志向の強い業界と言えるかもしれません。それに対して、現場に出向いて腕まくりしながらシステムや製品の販売・施工、メンテナンスを行うことでお客さまから信頼を頂いてきたアルメックスは、まさにアナログ志向の強い会社だったかもしれません。もちろん、アナログ志向の現場主義によって半世紀以上にもわたり社歴を築いてきたことは高く評価できると思いますが、時代は常に変化しています。
隕石の襲来ともいえる世界的なパンデミックを受けて、社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)とビッグバン・イノベーションの動きは不可逆的に加速していきます。そうした変化の速い激動の時代に、世の中から求められる企業であり続けるためには、組織は自律的かつ内生的に常にリノベーション(刷新)とイノベーション(革新)を起こして変革していかなければなりません。そのためには、心のこもった地道でアナログな事業活動に加え、よりデジタル思考での戦略的な判断力や、技術革新の中で生まれてくる新しいデジタル技術やネットワーク技術の積極的な活用が必要不可欠な状況になっています。
私自身もデスクで物事を評価し判断するだけでなく、お客さまや開発パートナーのいる現場に身を寄せて、そこから生まれるさまざまなニーズや、そこで抱えているさまざまな課題や問題を自分事として捉えるようにしています。そしてデータ分析や原因解析をしっかり行い、あるべきソリューションや求められる製品・サービスを打ち出していくといった、アナログ活動とデジタル思考の融合に注力しています。これまで培ってきた底力のある現場対応力や社員一人ひとりの人間力に加え、論理的思考性や事業展開の戦略性、プロダクツ創出におけるDXの活用と実践力を組織的に身に着けていくことによって、アルメックスは環境変化へ柔軟に適応し、より一層成長できる強靭な組織体になれるものと確信しています。
―― 具体的に、現在どのような活動を行っていますか?
現在、2019年から2024年までの中期経営計画を策定し、その実践に取り組んでいるところです。その本質は、アルメックス自体がデジタルトランスフォーメーション(ADX : Almex Digital Transformation)するという変革と挑戦への旅路を意味しています。日本の産業構造と人口動態構造が大きく変わっていくなかで、サービス産業の生産性向上や少子高齢化対策、未曽有の人手不足には、ITとDXを最大限活用して解決していかなければなりません。アルメックスは、こうした大きな社会的課題にしっかりと向き合い、私どもが目指すテクノホスピタリティとそれを具体化するプロダクツ&サービスを社会に溶け込ませていくことにより、社会から必要とされる企業として変革・成長し、大きなチャンスを掴みとっていきたいと思います。まさに壮大なプロジェクトの始まりといえます。
アルメックスは、業界のリノベーターとなりイノベーターとなって、私どもの事業領域における「断トツ・No.1 プレーヤー」、そしてお客さまの唯一無二の「ビジネスパートナー」となることを目指しています。そこで、中期経営計画には、(1)持続的な競争優位性の追求(安定性)、(2)市場変化に先立つ事業変革への挑戦(ダイナミズム)、(3)事業基盤の強化・再構築(堅確性)の3つを事業戦略方針の柱に置いて、ADXを実現すべく会社が一丸となってさまざまなリノベーションとイノベーションに取り組んでいくことを計画し、実行に移しているところです。
具体的には、①ハードウエアとソフトウエアと保守メンテナンスの3つのカスタマーサクセスサービスを三位一体でご提供し、サブスクリプションモデルへ転換していくこと、②当社の製品・サービスを導入されるお客さまの施設・サービスを利用するエンドユーザーや消費者の方々にも効率性や利便性や体験価値の向上を享受いただけるB2B2Cのプロダクツ&サービスを創出していくこと、③ホテルや医療業界などアルメックスが長年寄り添って発展してきた業界だけでなく、小売りやF&B(Food&Beverage)業界、アミューズメント業界、広い意味でのヘルスケア関連業界など、当社にとって新しい市場ニーズにしっかりお応えしながら水平展開していくこと、④これらを実現するために、クラウドネットワークやAI、IoT、キャッシュレスや生体認証・決済などのデジタルシステム・技術を活用したプロダクツの改善と新規開発をしていき、またそれらを担うADXエンジニア集団への転換を図っていくこと。これら4つを重点項目として掲げて果敢に取り組んでいるところです。
アナログで育んだお客さまとの信頼と高い市場シェアを誇る既存の事業基盤をベースに、まず私どもは自らを進化させなければなりません。そのためには、組織の生産性を改善し、お客さまや利用者の皆さまに卓越したDXプロダクツ&サービスとその本源的価値(トータルソリューション)をご提供できるよう変革していきます。まさに私どもはいま、デジタル技術やデジタル思考、デジタルインテリジェンスを駆使して新たな事業領域とビジネスモデルを開拓し構築するといった大きな目標に向かって真っ向から挑んでいるところです。

お客さまの声に呼応するカスタマイズ・ソリューションをご提供。
よりオープンに、協調と開放へ。

―― 創立からの55年間を振り返ってみて、アルメックスはどんな企業と言えますか?
アルメックスは、これまでは「超」がつくほどのスーパードメスティック(家庭的で国内志向的で自前主義的)な集団だったと思います。人間味のある野武士集団ともいえますし、「とにかくお客さまのお役に立ちたい」とお客さまにエンゲージ(寄り添い)してお客さまのもとをわたり歩く武器商人というイメージがありました。
しかしいま、確実に社員一人ひとりも組織も変革しています。そして実際に進化していると思います。商人は、お客さまに評価される製品やサービスを継続的にご提供できなければ、いずれ成り立たなくなります。そのためにはデジタルな思考と技術、データをしっかり活用した事業やプロダクツの戦略策定、市場に投入していく際のバリューチェーンの改善強化など、組織として体系的に実施していかなければなりません。また、お客さまにとっての付加価値や当社の生産活動の費用対効果をしっかり可視化しなければなりません。加えて開発パートナーや仕入先との取引状況やロードマップをしっかりデータで共有し無駄やムラや無理のない仕組みでオープンなコラボレーションを高速回転させていく必要があります。
もちろん優れた製品やサービスのご提供を支えるのは、地道な保守やメンテナンス、カスタマイズ対応であり、長い時間をかけて築きあげたお客さまやお取引先との信頼と信用関係にあることは不変の条理だと思います。そのアナログ的な野武士集団としての組織の強みと底力を守りながら、そのうえにデジタルという現代の神器、新しい武器を手にすることで、一層お客さまのお役に立てるテックカンパニーとしてのプロフェッショナル集団へと変身していけるものと信じています。
―― 経営に関しては、独自のスタイルがあるのでしょうか?
アルメックスの製品やサービスをご利用いただいているお客さまの業務効率を向上し、さらにその先にいるエンドユーザーに高水準の利便性や体験価値をお届けするべく、私どもは一貫して、付加価値を創出できる部分にリソース配分を徹底すべきだとする「スマイルカーブ経営」の強化に取り組んできました。
「ファブレスメーカーであり、メーカーそのものでない。SIerでもあり、SIerそのものではない」、というアルメックスのユニークなポジショニングと特徴に磨きをかけていくために、バリューチェーンの川上の製品企画・開発と、川下の営業・メンテナンスの部分にはアルメックス自身の経営資源をしっかり投入して、中間部分の製造・生産プロセスについてはオープンなコラボレーション戦略を打ち出し、外部の戦略パートナーとの強固な協調関係をベースにその外部リソースを積極的に活用させていただくことを経営スタイルの基本にしてまいりました。プロダクツの企画・開発と営業・メンテナンス、そしてカスタマーサクセスサービスにリソースを集中させることで、お客さまや市場の声とニーズ、課題を反映させたマーケットインの迅速な製品改良とプロダクツ開発、そして新たなビジネス展開が可能になると考えています。
また、当社は既存の技術を組み合わせ、お客さまそれぞれのニーズにお応えする製品づくりのノウハウを培ってきました。実際のところ、製品の大半はカスタマイズを施したセミオーダー製品となっています。その点が、マス・プロダクトによる自社の汎用製品を納品する大手メーカーとの決定的な違いといえます。お客さまに最適な製品、真に喜んでいただけるソリューションをご提供することこそが、アルメックスのこだわりであり、誇りであります。

社会に求められる企業であり続けるために、
3つの大きな軸で次世代を創造し、
テクノホスピタリティを社会に溶け込ませる。

―― 55周年から先の未来へ向けて、どのような領域に注力する方針でしょうか。
当社が注力すべき大きな軸は3つあります。(1)マザーマーケット日本における既存市場基盤の深化・深耕と新規周辺市場の開拓・創出(Market Focus)、(2)開発体制・サプライチェーンマネジメントのグローバル化、インバウンド・アウトバウンド事業の強化などビジネスのグローバルリゼーション(Global)、(3)そして既存技術のアップデートと最先端技術の活用によるプロダクツ開発の強化・革新(Technology)です。
まずは、市場の深堀・深耕と開拓・創出。社会のDX化が進むにつれて従来のホテル経営も医療経営も変革を求めて新しいニーズや課題解決テーマが生まれています。そうした変化をしっかり捉えてアルメックスのプロダクツ&サービスを改善し、新製品を提供し続ける必要があります。また、当社がトータルソリューションを提供できる機会は、従来のようなホテルや病院、飲食店、ゴルフ場に限らず、人と人とが行き交い滞在するあらゆる場所や空間にあると考えています。たとえばアミューズメント施設、小売り店舗、介護施設、スポーツジムなどにおいても非対面・非接触・省人化の受付・精算業務フローを構築することによりオペレーションの効率化と衛生面の安全・安心への改善、利用者の利便性の向上をお手伝いすることができます。そのような新規または周辺市場へ事業を拡大するために、多様な業種・業界の方々と協業させていただきながら、新しい化学反応(ケミストリー)を生み出していきます。
次に、ビジネスのグローバル化。プロダクツ開発においてプロフェッショナルなDXエンジニア集団へと変身していくにあたり、インハウス開発チームのグローバル人材を含めた多様化と、ハードウエア・ソフトウエア問わず開発パートナーのグローバル化を推し進めています。海外サプライヤーとの連携をより一層強化し、サプライチェーンのネットワークのオープンコラボレーションを推進することにより、製造・購買・納入のバリューチェーンプロセスを最適化してまいります。
また、グローバルビジネスへの挑戦としてアウトバウンド戦略をしっかり形にしていくことです。2015年にマレーシア(クアラルンプール)に現地法人「ALMEX SYSTEM TECHNOLOGY ASIA」、通称ASTAを設立して東南アジア事業を展開しています。日本が誇る「OMOTENASHI」の心=ホスピタリティとテクノロジーが融合するプロダクツ&サービス、すなわち日本に長く根付いている効率的で利便性の高いオペレーション・システムやその仕組みや文化、体験価値そのものを海外の皆さまにお届けするという使命を掲げて、その第一歩として世界が注目する東南アジア市場にアルメックス初となる海外拠点を開設し、事業展開しているところです。
そして、日本国内におけるインバウンド受入れへの準備と適応と強化です。中長期的な視野に立って、訪日外国人や外国人労働者が増加していく日本の未来に向けて、当社のプロダクツ群の仕様設計のグローバル標準化やUI/UXの多言語化対応を進めていきます。
3つ目の重要な軸はやはりテクノロジーです。トータル・オペレーション・システムの豊富なノウハウと実績を持つアルメックスの存在意義(レゾンデートル)は、そのソリューションを実現させるためのテクノロジーにあります。既存の技術と製品をアップデートすると同時に最先端の技術を研究・探索し実用化することで市場や社会に受け入れられる創造的な製品・サービスを生み出して、お客さまや利用者にとって部分的でないトータルのソリューションをお届けしていくことが究極のゴールです。
―― 実際にはどのような技術を融合させ、どのようなソリューションを提供しているのでしょうか?
病院業界においては受付、診療、投薬、会計、精算までの従来の連続的な効率化を実現するオペレーション・システムのご提供に加えて、デジタル技術を活用したオンライン決済スキームやヘルスケアテック構想を実現する製品開発とプラットフォームづくりに向けて果敢に挑戦しています。国家プロジェクトとして今後急速に普及していくマイナンバーカードと顔認証を利用した保険データのオンライン資格確認端末もアルメックスがこれまで蓄積してきたノウハウ技術と新しいテクノロジーを融合することにより生まれました。
また、レジャーホテル、ビジネスホテル、そして今後DXが進むと予想される観光ホテルや旅館、簡易宿泊施設など観光立国を支えるホスピタリティ業界に対しては、アルメックスがこれまで提供してきたプロダクツ&サービスの本源的価値をさらに掘り下げて進化させます。具体的には、非対面・非接触・省人化と新しい体験価値の創出をテーマに、宿泊施設と利用者のタビ前、タビ中、タビ後のカスタマージャーニーにおけるタッチポイントを結合するソフト、アプリとハードの連続的なトータルソリューションをお届けしてまいります。たとえば、個々のホテル・施設と利用者をダイレクトに結ぶスマホアプリケーションでは、オンライン情報検索、事前予約、顔認証やコード承認によるチェックインや、客室内IoTサービスなどを可能とします。また多様化するキャッシュレス手段に対応したコンパクトタイプのマルチ決済適用型KIOSK、利便性と安全性を兼ね備えたスマートキーデバイス、さらにはパブリッククラウドを利用した売上管理・顧客管理・業務管理・集客管理などを一元的に管理する次世代PMSなど、新しい時代に対応した新しい製品ラインアップを積極的に開発し展開してまいります。
さらには、AI搭載のソーシャルロボットやメンテナンスロボット、清掃消毒ロボットなどさまざまなXロボットの活用も進んでいくと思います。ますます人手不足と生産性の改善が求められる社会構造の転換の中で、ホテルスタッフや病院スタッフをはじめ、さまざまな施設のスタッフの業務効率を一層高めることをご支援するために、こうしたXロボットを活用したり、宿泊客や患者さまの受付サポートの充実や外国人の方々への通訳や情報案内などをご提供したりすることで、単純反復作業を人手に依存することなく高度なテクノロジーを駆使した真の「おもてなし」を体現するソリューションも、お届けできるのではないかと期待しています。
アルメックスは、クラウド、生体認証、FinTech、IoTセンサー、M2Mなど日進月歩を超えて秒進分歩で進化する技術革新の本質的な潮流を見失うことなく、アナログでリアルな人間世界の「フィジカル空間」とデジタルでオンラインのテクノロジー世界の「サイバー空間」を結合するプロダクツ&サービスを創出し、お客さまや社会から求められるテクノロジー×ホスピタリティをお届していく所存です。
―― 最後に、アルメックスの次なる50年について一言お願いします。
55周年はあくまで通過点に過ぎません。これから世界は大きく変わっていきます。SDGsやESGを志向した持続的な社会発展の形成、所有から利用へ移行するシェアリングエコノミーの拡大、ITとオンラインネットワークの一層の普及とDX。次の50年も私どもの揺るぎない財産である根底にあるアナログな人間力をぶらすことなく、これを守り継承していくとともに、デジタルな思考とデジタルな技術を積極的に取り入れて、この2つをしっかり融合し、私ども自身がまず進化成長し続けることで、社会から求められ続ける企業でありたいと思います。そして、アルメックスはこれからの新しい輝ける社会創造に対して、より一層貢献していくことをコミットメントいたします。
アルメックスがお客さまのバックヤードを支えるビジネスパートナーとして努力し続けることで、人が行き交うさまざまな場所や空間で人々のコミュニケーションが一層深まり、それによって世の中が明るくなり、心の豊かさが保たれるのであれば、私どもにとってこれ以上の喜びはありません。
―― テクノホスピタリティを世界へ。